SCP-JPN14-594
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クレジット
タイトル: SCP-JPN14-594 - 一緒に、美しい夜と成ろう
著者: koku4
作成年: 2026
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部門ID: SCP-JPN14
アイテム番号: 594
オブジェクトクラス: Keter
封じ込め手順: SCP-JPN14-594を発見した場合、即座に殺害してください。人間に対して用いるものと、同様の手段で構いません。もし仮にSCP-JPN14-594の殺害が不可能な状況である場合、即座にその場から逃げ出してください。
ローカル手順: JPN14部門に所属する財団メンバーは夜間、常に何らかの594の殺害手段を携帯してください。法律等の観点から、分厚い辞書やレンガ等の重量のある物質、又は木製バットや木刀等の取り回しの利く道具をお勧めします。
594の容姿に見覚えがあったとしても、その殺害を躊躇ってはいけません。594は、貴方が知る人物ではありません。594は偽物で、貴方を殺そうとしているのです。
説明: 594は午後10時から午前4時にかけて、神奈川県内かつ屋外のランダムな地点に出現する、人間の様相をした霊的実体です。594は肉眼での視認が可能であり、また専用の薬剤を用いずとも接触が可能です。
594は出現後、以下の条件を満たす人物(以下、対象)の元に向けて、最短のルートを取る形で歩行します。
・JPN14部門所属の財団メンバーである。
・屋内に滞在している。
・上記2点を満たした人物の内、594から最も近い地点に滞在している。
対象の滞在する家屋へ至るルートが封鎖されている・対象が施錠された屋内に居る等、594が対象の元へと到達する道のり上に何らかの障害物が存在する場合、594は当該の障害物をすり抜けるという形で無効化します。何れにせよ、594が奇跡的に道中で殺害されでもしない限り、最終的に594は対象の元へと到達します。
594は対象との接触後、対象に向けて対話を試みます。この時、対象が就寝中である場合、594はその身体を揺り動かす形で対象の起床を促すことが確認されています。また、これ以降の594の行動パターンは、対象が対話に応じるか否かにより変化します。
1. 対象が594との対話に応じた場合
対象が594との対話に応じた場合、両者は当たり障りのない会話を行います。この際に行われる会話は、その主な内容として594の生前に関する情報が多用されることが判明しています。数分間の歓談の後、594は対象に対し、屋外を散策することを提案します。この提案は対象の生命を脅かす極めて危険なものであるにもかかわらず、現在までにこの提案を断った事例は確認されていません。
2. 対象が594との対話を拒否した場合
対象が594との対話を拒否した場合、594は即座に対象の左腕を掴み、その後に屋外へと移動します。この際、対象は594による拘束を振り払おうと試みますが、その力強さから失敗に終わります。
何れの場合においても、最終的に、対象は594と共に屋外へと移動します。
屋外へと移動後、594は対象と共に、最も近い位置に滞在する異常存在の元へ移動します。JPN14部門管轄地域の異常存在はその多くが致死性の異常性を保有しており、結果として対象は死亡します。594は対象の絶命と同時に消失することが確認されており、また翌日の出現以降、594の様相は死亡した対象の容姿へと変化します。現在の594の様相は、2026年07月21日に死亡した高津祐一氏のものと酷似しています。 補遺を参照してください。
594は人間に対するものと同様の手段を用いて殺害することが可能です。594を殺害した場合、594は絶命と同時に喪失します。しかしながら殺害による594の出現防止は一時的なものであり、594は殺害した翌日以降、平然と出現し続けることが確認されています。
遭遇報告: 一例として、私(江田美咲)が2026年08月01日に594と遭遇した事例を取りあげます。場所はサイト-JPN14-03の監視カメラ室、時刻は12時36分ごろです。
当時の私は監視カメラ室にて、SCP-JPN14-794の動向の監視を行っていました。同サイトは私個人での運営が行われており、そのため他者の立ち入りが発生することは 取り分け、異常存在の跋扈する夜間においては あり得ません。しかしながら、当該時刻、私は監視カメラ室外から響く足音を感知しました。
椅子から立ち上がると同時に、594対策として常備していた金属バットを構えて待つこと数十秒。監視カメラ室の扉を開き、594が姿を見せました。......私を恐ろしい夜から救い、SCP財団の存在を教えてくださり、そして先日亡くなった、唯一の先輩の姿を模した594が。
躊躇することなく、手元の金属バットを振り下ろすべきだったのでしょう。しかし、懐かしい姿を前に、思考に一瞬の空白が生まれます。その間に、594は馴染み深い声でこう語りました。「久しぶり、少し話さないか?」と。
しかし、もう手遅れでした。いえ、それが正しい判断であることは間違いありません。彼の口が開いた瞬間には、手に持った金属バットは既に振り上げられていました。重い感触と、鈍い水音が、金属バットを通じて伝わります。気付けば594は、頭から血を流し、倒れ伏したまま呻き声をあげていました。
それだけではありません、594はその呻き声のさなかに、私の名前と、そして自身が偽る先輩の名前を唱え続けていました。だから、私はもう一度、金属バットを振り下ろしました。しかし呻き声は止まず、それであればもう一度、もう一度と、幾度となく金属バットを振り落としました。
気付けば594は沈黙し、やがて姿を消しました。この文書をここまで読んだあなたへ、594を初めて殺した後はカウンセリングを受けることをお勧めします。……私は未だ、先輩とそっくりの顔をした594を殴り殺した時の、あの感触を。忘れきることが出来ていません。
報告者: 江田美咲 SCP-JPN14-594収容担当
追記: 2026年08月15日、神奈川県横浜市の路上にて、594の収容責任者であった江田氏の死体が発見されました。死体はその肉体部分のみが溶解した状態で発見されており、SCP-JPN14-794の異常性により死亡したものと推測されています。
またサイト-JPN14-03及びその周辺の路上に設置された監視カメラの記録映像から、江田氏の死に594が間接的に関与していたことが明らかになっています。以下は当該の映像記録群を繋ぎ合わせ、書き起こしたものです。
映像記録JPN14-594
記録日: 2026/08/15 23:22:11 - 23:56:42
<抜粋開始>
[23:22] 監視カメラ室にて、江田氏が扉に向けて金属バットを構えた状態で直立している。江田氏の身体は目に見えて震えており、また過呼吸気味である事が窺える。
[23:23] 監視カメラ室の扉が開き、594が室内へ侵入する。
[23:23] 江田氏が金属バットを持った腕を振り上げるものの、躊躇するように動作を止め、その後ゆっくりと腕を下ろす。下ろした手から金属バットが滑り落ち、床に転がる。
[23:23] 江田氏が金属バットを拾い上げようと屈み、そのまま崩れ落ちる。江田氏の表情は、涙を浮かべているように見える。
[23:24] 594が江田氏へ右手を差し伸べる、江田氏は594の手へ縋りつく。
[23:24] 江田氏: ごめんなさい、私は、私は
[23:24] 594が左手で江田氏の背中を優しく叩く。その後、594は江田氏を椅子に座らせる。
[23:24] 594: ほら、落ち着いて。......そうだ、深呼吸しよう。
[23:24] 594が江田氏へ息を吸う、又は息を吐くことを指示する。江田氏は594の指示に従い、息を吸い、吐く。江田氏は次第に落ち着きを取り戻していく。
[23:25] 594: 落ち着いたみたいだね。それじゃあ......話をしようか。いつものように、取り留めのない、くだらない話を。
[23:25] 江田氏が594の言葉に対し、首を縦に振る。
[23:25] 594: ありがとう。[小さな笑い声] よく考えたら、こうして話すのも随分と久しぶりだね。最後に話したの、いつだっけ?
[23:25] 江田氏: ......[泣きそうな声で] 昨年の12月に、忘年会のついでに会った時だと思います。
[23:25] 594: 確かに、あれが最後か。あの時は本当に大変だったよ、君が酔いつぶれちゃったから、夜が来る前にと慌てて此処に連れて帰って。
[23:25] 江田氏: そ、その節は大変ご迷惑を......けど先輩だって、私がお酒を飲めなかった2年前は、寧ろ逆に酔いつぶれてたじゃないですか。先輩のサイトまで引き摺って行くの、めちゃくちゃ大変だったんですよ?
[23:25] 594: おっと、これは一本取られたね。
[23:25] 江田氏: [小さな笑い声]......やっぱり楽しいですね、こうやって話すのは。
[23:26] 594: [笑顔で] ほんと、その通りだね。......そういえば
<中略、他愛もない会話が続く>
[23:41] 594: ああ、もうこんな時間か。
[23:41] 江田氏: 何かこの後に用事でも?
[23:41] 594: ああ、いや、そういう訳じゃないんだけどね。
[23:41] 594: ......良ければさ、夜空の下を、一緒に歩かない?
[23:42] 10秒程度の間、沈黙が流れる。
[23:42] 594: まだ、夜が怖い?
[23:42] 江田氏: 寧ろ、先輩は。夜が、怖くないんですか?
[23:42] 594: そりゃあ怖いさ。......でも、それ以上に。僕は、夜が美しいことを知ってしまったんだ。
[23:42] 594: [5秒程度の沈黙の後] 僕はね、君にも知ってほしいんだ。夜の、息を呑むような美しさを。......駄目かな?
[23:42] 10秒程度の間、沈黙が流れる。
[23:43] 江田氏: ......いいですよ。
[23:43] 594: [驚いたような表情で] 本当に、良いの?
[23:43] 江田氏: 他でもない、先輩の頼みですから。それに......
[23:43] 594: それに?
[23:43] 江田氏: [恥じらうような表情で] 先輩と同じ光景を、私も見たいので。
[23:43] 江田氏: ......そっか、[微笑んで] ありがとう。
[23:44] 両者が監視カメラ室を退出し、サイト-JPN14-03の出入り口へと移動する。
[23:45] 両者がサイト-JPN14-03から外に出する。空は快晴であるものの、月明かりは無い。
[23:46] 江田氏: ......暗いですね。
[23:46] 594: 月が空から落っこちて、大地の上で、静かに浮かんでいるからね。
[23:46] 江田氏: ......もしかして、794の事ですか?
[23:46] 594: お、正解。よく覚えてるね、[江田氏の頭を撫でて] 偉い偉い。
[23:46] 江田氏: [恥ずかしそうな表情で] わ、私が収容担当者ですから、それほどでも......。
[23:46] 594: [驚いた表情で] へえ、いつの間に......ちなみにさ、794を直接見たことはある?
[23:46] 江田氏: いえ、監視カメラ越しでしか。
[23:46] 594: なるほどね......じゃあ、これから794を見に行こうか。それで良い?
[23:46] 江田氏: ......はい、喜んで。
[23:47] 594が僅かに先導する形で、両者が並んで歩き始める。1分程度の間、両者は沈黙しながら歩き続ける。
[23:48] 594: 月は日に日に表情を変え、青白い光で大地を冷ややかに照らしている。星々は互いに異なる色彩と明度で輝いて、黒く染め上げられた夜空を埋め尽くす。宵闇は、ある時は切り裂くかのように凛とした冷たさで、またある時は蝕むような暖かさで、僕たちを包み込む。
[23:49] 594: そうやって夜を構成する全ての要素は、僕にとっては、美しくて仕方がない存在だったんだ......太陽が地平線へと沈むとともに、滲むように現れる、異常な存在たちと出会うまでは、ね。
[23:50] 1分程度の沈黙。
[23:51] 594: 青白い月に照らされた大地には、赤黒く蠢く血と臓物が闊歩して。零れ落ちた夜空は星々を纏い、人々を透き通った黒へと溶かしていく。宵闇はある時は人々を切り裂き血を貪って、またある時は人々を呪いの様に覆い攫って行く。
[23:51] 594: そうして僕は、不運にも。そんな夜の恐ろしさを、忘れることが出来なかった。君もそうだろう? だから、夜を恐れ続けている。
[23:51] 江田氏がゆっくりと、首を縦に振る。
[23:52] 594: けどね、僕はそれでも尚、夜を美しいと思い続けたんだ。だって、ほら
[23:52] 両者が曲がり角で立ち止まる。曲がり角の先には、道路と同じほどの幅をした青白く光る巨大な海月と、その周囲を漂う青白く光る小さな海月の群れが確認できる。これらの特徴から、当該の異常存在はSCP-JPN14-794であると推測される。
[23:52] 594: こんなにも、夜は美しいのだから。
[23:52] 江田氏が息を呑み、数秒後に静かに吐き出す。
[23:52] 1分程度の沈黙。
[23:53] 江田氏: ......月が、奇麗ですね。
[23:53] 594: ......そうだね。
[23:53] 1分程度の沈黙。
[23:53] 江田氏: 先輩が見ていた夜は、こうも美しかったんですね。
[23:53] 594: 分かってくれた?
[23:53] 江田氏: ええ、十二分に。
[23:54] 1分程度の沈黙。
[23:55] 594: ......賢い君は、疾うに気付いてるんだろうね。僕が、夜の一部だってことに。
[23:55] 江田氏: [小さな笑い声] 自分から言うんですね。当り前じゃないですか、最初から気付いてますよ。
[23:55] 594: [小さな笑い声] やっぱりね。......ねえ、もし良ければさ
[23:55] 江田氏: [遮るように] 良いですよ。
[23:55] 594: [驚いた表情で] ......え?
[23:55] 江田氏: どうせ、「一緒に、美しい夜と成ろう」とでも言うつもりでしょう?
[23:55] 594: ......君には何でもお見通しだね。うん、その通りだよ。
[23:55] 江田氏: [微笑んで] 良かった。さあ、行きましょう。[594へ手を差し伸べる] 一緒に、美しい夜と成るために。
[23:56] 594: [微笑んで] ......ありがとう。[江田氏が差し伸べた手を取る]
[23:56] 江田氏と594が手を繋いだままSCP-JPN14-794へと近づき、接触する。両者はSCP-JPN14-794に溶かされ、夜に溶け込むように姿を消す。
<抜粋終了>
同日の夜間以降、594の様相は、江田氏を模したものへと変化しています。

